VOC分析とは、顧客の声(Voice of Customer)を集めて分析し、商品やサービスの改善につなげる取り組みです。問い合わせやアンケートだけでなく、ECサイトのレビューやGoogleマップの口コミも、いまや重要な顧客の声になっています。
ただ、VOC分析でつまずきやすいのは「分析」より手前の「収集」です。生成AIを活用してVOC分析に取り組む担当者329人への調査では、「SNSなどの外部データを継続的に収集・分析する仕組みを構築できていない」が38.4%、「データの前処理や整理が大変」が33.4%にのぼりました(出典:MarkeZine「生成AIでのVOC分析に関する実態調査」(プラスアルファ・コンサルティング調べ))。
本記事では、口コミの収集をOctoparse(オクトパース・オクトパス)のテンプレートに、分類と分析をClaudeに任せる方法で、AmazonとGoogleマップのレビューを合計1,300件超集めて分析した実例を紹介します。分析からは「評価の低い商品の不満は、音質ではなく充電と接続に集中していた」「同じチェーンでも、評価の低い店舗の不満はオーダーミスと接客に偏っていた」といった、改善の打ち手に直結する発見が得られました。
VOC分析とは?マーケティングにおける意味
VOC(Voice of Customer)は「顧客の声」を意味します。マーケティングにおけるVOC分析は、顧客の要望や不満、評価を集めて整理し、商品開発、サービス改善、販促、カスタマーサポートの改善に活かす取り組みです。
顧客の声には「社内」と「社外」がある
| 種類 | 主な例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 社内にある声 | 問い合わせ、アンケート、営業の商談メモ | 自社の顧客の声。量は限られる |
| 社外にある声 | ECサイトのレビュー、Googleマップの口コミ、SNS | 購入者や来店客が自発的に書いた声。量が多く、競合の声も読める |
社外の声の強みは、自社だけでなく競合商品や他店舗の評価まで同じ物差しで比べられることです。一方で、サイトごとに散らばっているため、集めるだけで手間がかかります。
VOC分析で分かること
- 顧客が何に不満を持っているか(改善すべき点)
- 何が評価されているか(伸ばすべき強み)
- 競合と比べて、どこで差がついているか
- 不満が特定の時期や店舗、顧客層に偏っていないか
VOC分析のやり方:5つのステップ
VOC分析は、次の5つのステップで進めます。
- 目的を決める:「評価が伸びない原因を知りたい」「店舗ごとの改善点を知りたい」など
- 顧客の声を集める:レビュー、口コミ、問い合わせなどを、比較できる単位で集める
- 整理する:重複や空欄を除き、商品や店舗ごとにまとめる
- 分類・分析する:不満や評価をテーマ別に分け、割合や偏りを見る
- 施策につなげる:分析結果から、誰が何を改善するかを決める
手間がかかるのは2と4です。ここをOctoparseとAIで分担すると、次のようになります。
| ステップ | Octoparse が担うこと | AI(Claude)が担うこと |
|---|---|---|
| 2. 集める | テンプレートでレビュー・口コミをクラウド収集 | 目的に合うテンプレートと対象を選ぶ |
| 3. 整理する | CSV・Excelで書き出す | 重複や空欄を除き、商品・店舗ごとにまとめる |
| 4. 分類・分析する | ― | 不満をテーマ別に分類し、比較する |
| 5. 施策につなげる | 定期実行で効果を追い続ける | 次に集めるデータや改善案を提案する |

【実践1】Amazonのレビューで商品のVOC分析をする
最初の題材は、Amazon.co.jpで「ワイヤレスイヤホン」と検索したときに1ページ目に出てくる商品です。前回の記事で、レビューが多いのに評価が4.0未満の商品が3つ見つかりました。その理由を、レビュー本文から探ります。
ステップ1|テンプレートでレビューを集める
ClaudeにOctoparseを接続し、次のように依頼しました。
評価3.9の3商品と、比較用に評価の高い3商品のレビューを、2025年1月以降の分だけ集めて。
使ったのはhttps://www.octoparse.jp/template/amazon-jp-review-details-scraperです。入力するのはASIN(Amazonの商品番号、最大50件)と、取得を始める投稿日の2つだけ。クラウドで実行すると、6商品分で1,023件のレビューが集まりました(重複を除くと1,020件)。取得できる項目は次のとおりです。
- ASIN、商品タイトル、ページURL
- 星、レビューのタイトル、レビュー本文、投稿日
- 「役に立った」の数、投稿者名
比較の組み立ては次のとおりです。
| グループ | 商品 | 評価 |
|---|---|---|
| 評価3.9のグループ | 国内大手ブランドの3商品 | いずれも3.9 |
| 比較グループ | 同じメーカーや近い価格帯で、評価の高い3商品 | 4.0〜4.4 |

ステップ2|低評価レビューの不満をAIに分類させる
次に、星1〜3のレビューだけを対象に、不満のテーマを分類させました。
星1〜3のレビューを、充電・バッテリー、接続・途切れ、音質、装着感、初期不良、故障・耐久性などのテーマに分けて。1件に複数のテーマがあればそれぞれ数えて、評価3.9のグループと比較グループで割合を比べて。
評価3.9のグループは236件、比較グループは91件が対象になりました。
| 不満のテーマ | 評価3.9のグループ | 比較グループ |
|---|---|---|
| 充電・バッテリー | 46% | 19% |
| 接続・途切れ | 41% | 25% |
| 音質 | 22% | 31% |
| 装着感・フィット | 18% | 21% |
| 初期不良・品質 | 16% | 4% |
| 故障・耐久性 | 14% | 10% |

分析で分かったこと
評価を下げていたのは「好みの不満」ではなく「使えなくなる不満」でした。 評価3.9のグループでは、充電・バッテリーの不満が46%と、比較グループの2倍以上。接続が切れる不満や初期不良も多く出ていました。一方、評価の高い比較グループで目立つ不満は、音質や装着感といった好みに左右されるものでした。
さらに中身を見ると、「片耳だけ充電されない」という趣旨のレビューが、評価3.9のグループでは40件(低評価レビューの17%)あったのに対し、比較グループでは4件(4%)でした。「購入から1年ほどで片方が充電できなくなった」という時期の言及も、繰り返し出てきます。
星の平均だけを見ていると「少し評価が低い」で終わってしまいますが、レビュー本文を分類すると、どこを直せば評価が上がるのかが具体的に見えてきます。
VOC分析の結果をどう活かすか
| 部門 | 活かし方の例 |
|---|---|
| 商品企画・品質管理 | 充電端子やケースの接点まわりを重点的に検証する |
| カスタマーサポート | 「片耳だけ充電されない」ときの対処をFAQの上位に置く |
| 販促・EC運営 | 保証期間や耐久性を商品ページで伝え、購入前の不安を減らす |
| 競合として見る場合 | 「充電の安定性」を自社商品の訴求軸にする |
【実践2】Googleマップの口コミで店舗のVOC分析をする
2つ目の題材は店舗です。ある大手カフェチェーンの渋谷エリアの店舗を対象に、評価の高い店と低い店で口コミの中身を比べました(店名は伏せ、A店〜D店と表記します)。
ステップ1|店舗一覧を集めてから、口コミを集める
店舗のVOC分析では、まず対象の店舗を洗い出し、そのあと口コミを集める2段構えにします。
- https://www.octoparse.jp/template/google-maps-store-listing-scraperで、キーワードから店舗一覧を取得(店名、評価、レビュー数、住所、URLなど)。今回は20店舗が見つかりました
- その中から評価の高い2店(4.2と4.1)と低い2店(3.8と3.7)を選び、https://www.octoparse.jp/template/google-maps-review-scraper-cloudで各店80件、合計320件の口コミを取得
店舗一覧で取れたURLを、そのまま口コミ収集の入力に使えるのが2段構えの利点です。どちらもクラウドで実行しました。

ステップ2|口コミの不満をAIに分類させる
4店舗の口コミを、混雑・席、接客、提供・待ち時間、味・メニュー、眺め・立地などのテーマに分けて。星1〜2の口コミについては、店舗ごとに何が多いかを比べて。日本語以外の口コミも訳して分類して。
| 店舗 | 評価 | 星1〜2の件数 | うちオーダーミス・提供漏れ | うち接客態度 |
|---|---|---|---|---|
| A店 | 4.2 | 6 | 0 | 2 |
| B店 | 4.1 | 6 | 2 | 0 |
| C店 | 3.8 | 14 | 6 | 7 |
| D店 | 3.7 | 16 | 6 | 5 |

分析で分かったこと
同じチェーン、同じメニューでも、評価の差は店舗の運営から生まれていました。 評価の低い2店では、星1〜2の30件のうち、「注文が通っていなかった」「違う商品が出てきた」「後から来た人が先に受け取っていた」といったオーダーミス・提供漏れが12件、接客態度への不満が12件ありました。評価の高い2店では、どちらも2件以下です。
もう1つの発見は、店舗ごとに「誰の声か」がまったく違うことです。本文のある口コミの言語を見ると、B店は7割以上が日本語以外(英語、韓国語など)で、立地柄、訪日客の利用が多いことがうかがえます。一方、C店とD店は8割前後が日本語でした。B店の口コミを日本語だけで分析すると、顧客の大半の声を見落とすことになります。AIに翻訳と分類を同時に任せられるのは、多言語の口コミが集まる店舗のVOC分析では大きな利点です。
評価の高い店舗で多く語られていたのは、眺めや立地、空間の心地よさでした。

VOC分析の結果をどう活かすか
- 評価の低い店舗:注文の受け渡しやモバイルオーダーの確認手順を見直す。不満のテーマが明確なので、研修の重点を絞り込める
- 訪日客の多い店舗:多言語での案内や、支払い方法・トイレの使い方など、口コミで質問が多い点を店頭で先回りして案内する
- チェーン全体:店舗ごとに不満のテーマを毎月集計し、改善の効果を追いかける
AIでVOC分析をするときの3つのコツ
実際にやってみて分かった、AIにVOC分析を任せるときのコツです。
1. 比較対象を必ず置く
「評価3.9の商品の不満」だけを見ても、それが多いのか少ないのかは判断できません。評価の高い似た商品や店舗と並べて比べることで、はじめて「差」が見えます。今回も、比較グループを置いたことで「充電の不満が2倍以上」という結論が出せました。
2. 星の数ではなく、不満の中身を比べる
Amazonのレビューテンプレートは、星の数ごとにレビューを集める仕組みになっていました。そのため、集めたレビューの星の分布は実際の分布とは異なります。分析では星の割合ではなく、「低評価レビューの中で、どの不満が何割を占めるか」を比べるのが確実です。
3. 分類のテーマは人が決め、原文で確かめる
AIはテーマ分けを高速にこなしますが、どのテーマで分けるかは目的によって変わります。最初にテーマの候補を伝え、AIの集計結果が出たら、代表的な口コミの原文を何件か読んで、分類がずれていないかを確かめてください。
2026年最新:VOC分析を毎週自動で回す(MCP AI)
VOC分析は、一度きりで終わらせず、定期的に回してこそ効果を発揮します。OctoparseのMCP AI機能を使えば、ClaudeやChatGPTなどのAIエージェントがOctoparseのスクレイピング能力を直接呼び出し、口コミの収集から分析までを自律的に実行します。
たとえば、AIエージェントに次のように指示するだけで、データの収集→整理→分析→レポーティングまでが自動化されます。
「自社商品と競合2商品のAmazonレビューを毎週収集して、星1〜3のレビューを不満のテーマ別に分類して。前週から増えたテーマと、新しく出てきた不満を見つけて、週次レポートをスプレッドシートにまとめて」
従来なら、各商品のレビューページを開く、新しいレビューを探してコピーする、表に貼り付ける、1件ずつ読んでテーマを付ける、前週と比べて変化をまとめる、という工程をすべて人間が手作業で行う必要がありました。MCP AI機能を使えば、人間は目標設定だけを行い、AIが自律的に全工程を実行します。
新商品の発売直後や、ファームウェアの更新後など、顧客の声が急に変わりやすいタイミングでも、変化を早くつかめるようになります。

VOC分析ツールの選び方
VOC分析ツールには大きく3つのタイプがあります。目的と、すでに手元にあるデータによって向き不向きが分かれます。
| タイプ | 得意なこと | 向いているケース |
|---|---|---|
| 専用のVOC分析ツール | 問い合わせやアンケートなど社内データの一元管理と分析 | 社内に顧客の声が大量にたまっている企業 |
| テキストマイニングツール(AIテキストマイニング) | 手元にある文章データの頻出語や感情の分析 | 分析したいデータがすでにファイルで揃っている場合 |
| スクレイピングツール×生成AI | 社外の口コミ・レビューの収集から分類・分析まで | 競合や他店舗も含めて、社外の声を継続的に集めたい場合 |
社外の口コミを使うVOC分析では、最初の「集める」で止まってしまうケースが少なくありません。スクレイピングツールで集める仕組みを先に作っておけば、分析には生成AIでも、既存のテキストマイニングツールでも使えます。
VOC分析の注意点
- 個人情報は分析に使わない:投稿者名などは分析に必要ありません。集めたデータからは除いて扱いましょう
- 口コミの原文をそのまま公開しない:社外に共有する資料では、要約や件数で示し、特定の投稿者が分からないようにします
- 利用規約と取得量に配慮する:対象サイトの利用規約を確認し、必要な範囲・頻度で集めます
スクレイピングの違法性などの疑問については、スクレイピングのよくある誤解で詳しく解説しています。
よくある質問(FAQ)
VOC分析とアンケート分析の違いは何ですか?
アンケートは企業が質問を用意して答えてもらう方法で、聞きたいことを確実に聞けます。VOC分析は、レビューや問い合わせなど顧客が自発的に発した声も含めて分析するため、企業が想定していなかった不満や要望に気づきやすいのが特徴です。
何件くらい集めれば分析できますか?
テーマごとの割合を比べるなら、比較したいグループごとに低評価のレビューが数十件以上あると傾向をつかみやすくなります。今回は、評価3.9のグループで236件、比較グループで91件の低評価レビューを分析しました。
プログラミングができなくてもできますか?
できます。ClaudeにOctoparseをMCPで接続すれば、日本語で依頼するだけで、テンプレートの選択から口コミの収集、分類、集計まで進みます。
無料で試せますか?
試せます。Octoparseのhttps://www.octoparse.jp/template/google-maps-review-scraperは無料で使えます。また、Freeプランでは、MCPとCLIでテンプレートを使った取得が合計で月2,000件まで無料です。
楽天や価格.comの口コミでもできますか?
できます。Octoparseには楽天、価格.com、Yahoo!ショッピング、Booking.comなど、口コミやレビューを集めるテンプレートが用意されています。どれを使えばよいか分からないときは、AIに「〇〇の口コミを集めたい」と伝えれば、候補を探してくれます。
まとめ
正直に言うと、筆者も最初は「VOC分析で大事なのは分析の手法だ」と思っていました。
考えが変わったのは、1,000件を超えるAmazonのレビューを分類したときです。評価3.9の商品と評価の高い商品を並べると、差がついていたのは音質ではなく「片耳だけ充電されない」「接続が切れる」といった、使えなくなる不満でした。カフェの口コミでも、評価を分けていたのは味ではなく、注文の受け渡しでした。どちらも、星の平均を眺めているだけでは出てこない答えです。
そして、この答えにたどり着けたのは、AIが賢かったからだけではありません。Octoparseのテンプレートが、比較できる形でレビューを1,300件超集めてきたからです。VOC分析の質は、分析の手法より先に、比べられる顧客の声をどれだけ集められるかで決まります。
まずは自社商品と競合商品を1つずつ選んで、レビューを集めて並べてみてください。
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