「食べログのレビュー情報を自動収集するために、スクレイピングを利用しても大丈夫?」このような疑問をお持ちではありませんか。
データ活用が求められるなかで、ウェブページやオンラインプラットフォーム上の情報を効率的に収集する方法として、「スクレイピング」が注目されています。スクレイピングを活用することで、データ収集に掛かる手間や時間を大幅に削減できる一方で、その扱いには注意が必要です。
特に、ウェブサイトによってはスクレイピングの利用を禁止しているケースもあり、場合によっては利用制限や訴訟リスクもあります。本記事では、スクレイピングの基本から、食べログでスクレイピングを行う際の注意点、適切な方法まで詳しく解説します。
スクレイピングとは
スクレイピングとは、ウェブサイトから必要な情報を自動的に抽出する技術です。ウェブページは通常、HTML形式で作られていますが、そこに含まれるデータは構造化されていません。スクレイピングを使えば、そうした非構造化データを、Excelなどの表形式に変換することができます。
スクレイピングには、主に2つのツールが使われます。
- クローラー:ウェブサイトを巡回し、指定された情報を探し出すプログラム
- スクレイパー:見つけ出した情報から、必要なデータを抽出するツール
クローラーとスクレイパーによって、以下のような流れでスクレイピングが行われます。
- クローラーが、情報を取得したいウェブサイトにアクセスする
- ウェブサイトのHTML構造を解析する
- 欲しい情報がどこに書かれているのかを特定する
- スクレイパーがその部分からデータを抜き出す
- 抽出したデータを整形し、Excelなどに保存する
スクレイピングは、すでに私たちの身の回りで活用されており、その目的も様々です。たとえば、次のような用途が挙げられます。
- 商品の価格比較
- メールアドレスの収集
- ソーシャルメディアの評判分析
このように、スクレイピングを活用すれば、ビジネスなどで大いに役立つでしょう。ただし、スクレイピングを正しく使うためにはある程度の知識が求められます。大量のアクセスでサーバーに負荷をかけすぎたり、ウェブサイトの利用規約に違反したりしないよう、十分に気をつける必要があります。
スクレイピングが禁止される理由
スクレイピング自体は違法ではありません。実際に、政府や自治体でもスクレイピングを活用したデータ収集を行っており、ビッグデータ活用が求められる現代において欠かせない技術の一つです。
一方で、ウェブサイトによってはスクレイピングを禁止している場合があります。ここでは、スクレイピングが禁止される主な理由を詳しく見ていきましょう。
著作権侵害の恐れがあるため
スクレイピングを通じて取得されるデータには、著作権で保護されているコンテンツが含まれている可能性があります。特に、文章、画像、ビデオなどのメディアは著作権の対象となり得るため、無断でこれらをコピーし使用することは著作権侵害にあたることがあります。
そのため、スクレイピングを行う際は、著作権を侵害しないように対象となるコンテンツの利用規約を前もって把握し、必要に応じて使用許可を取得する必要があります。
サーバーに過度な負担が掛かるため
スクレイピングは自動化されたプロセスであり、短時間に大量のリクエストをサーバーに送ることが可能です。このような集中的なアクセスは、サーバーに予期せぬ高負荷を与え、サービスの品質に悪影響を及ぼすことがあります。
その結果、サイトの正常な運用を妨げたり、他のユーザーのアクセスを阻害したりする可能性があるため、多くのサイトがスクレイピングを制限または禁止しています。
データが違法行為に使用される可能性があるため
スクレイピングは、時としてスパム送信、フィッシング、情報の不正取得といった違法行為に利用されることがあります。このようにスクレイピング技術が悪用されるリスクを抑制するために、多くのウェブサイトは利用規約でスクレイピングを禁止しています。
食べログをスクレイピングすることは禁止?
食べログは、国内最大級のグルメレビューサイトです。全国のレストラン情報や、お店を利用したユーザーの口コミが掲載されています。
その膨大な情報量をもとに、営業リストを作成したり、市場調査データをまとめたりなど、様々な用途で活用できます。食べログの情報収集を効率化するために、スクレイピングを活用したいと考える方も多いでしょう。ここでは、食べログのスクレイピング活用について解説します。
食べログはスクレイピングを禁止されていない
現在の食べログの利用規約(2024年4月時点)では、具体的に「スクレイピングを禁止する」と明記されていません。したがって、スクレイピングを行うこと自体は問題ないといえるでしょう。一方、利用規約の中で、営業活動や他の営利を目的とした利用やアクセスを禁じています。
食べログの転用・転売の禁止
[1]お客様は、当社が提供する食べログについて、その全部あるいは一部を問わず、営業活動その他の営利を目的とした行為又はそれに準ずる行為やそのための準備行為を目的として、利用又はアクセスしてはならないものとします。また、その他、宗教活動、政治活動などの目的での利用又はアクセスも行ってはならないものとします。
[2]食べログへ投稿された口コミを無断転載・無断利用することは禁止します。ただし、当該投稿をした本人は除きます。
[3]口コミを投稿した本人による当該口コミの利用等本規約が特に認めた場合を除き、食べログに掲載されている口コミを利用して利益を得た場合には、当社はその利益相当額の金員を請求できる権利を有するものとします。
引用:食べログ利用規約
したがって、スクレイピング自体には問題がなくとも、スクレイピングによって収集したデータの取扱には注意が必要です。例えば、収集したデータを公開したり、第三者に提供することは、規約に違反する行為となり得ます。したがって、スクレイピングで得たデータは個人の研究や内部使用に留め、公開や商用目的での利用は避けましょう。
食べログをスクレイピングする方法
食べログのデータをスクレイピングすること自体は、違法性や規約違反ではありません。ここでは、食べログをスクレイピングする方法を大きく2つ解説します。
プログラミング(Python)
プログラミングによるスクレイピングといえば、一般的にPythonの利用がメジャーです。特に、Pythonでは、スクレイピングライブラリ(テンプレートのようなもの)があるため、比較的かんたんに操作できます。
Pythonでよく使用されるスクレイピングライブラリには、BeautifulSoupとScrapyがあります。BeautifulSoupは簡単にHTMLとXMLの解析ができ、Scrapyはより高度なクローリングやデータマイニングに適しています。
Pythonを使って食べログをスクレイピングする基本的なステップは以下の通りです。
- URLの定義:スクレイピングする食べログのページのURLを指定します。
- リクエストの送信:Pythonのrequestsライブラリを使用して、定義したURLからHTMLデータを取得します。
- データの解析:取得したHTMLからBeautifulSoupを使用して必要なデータを解析・抽出します。
- データの保存:抽出したデータをCSVファイルやデータベースに保存します。
このプロセスを自動化することで、定期的にデータを更新し、最新の情報を保持することが可能です。
スクレイピングツール
プログラミングスキルがない場合は、クラウド型のスクレイピングツールを使用することで、食べログからデータを抽出できます。スクレイピングツールは、GUIのインターフェースを提供しているため、コーディングをせずとも直感的な操作だけでデータ抽出が可能です。
スクレイピングツールは数多くのツールが存在していますが、代表的なツールとして、「Octoparse(オクトパス)」があります。これらのスクレイピングツールは、ウェブサイトのデータを構造化された形式で抽出し、ユーザーが容易にアクセスできるのが特徴です。
Octoparseを使って食べログをスクレイピング方法
スクレイピングツールを使えば、プログラミングスキルを持たない非エンジニアの方でも簡単にスクレイピングが可能です。ここでは、実際にOctoparseを使って食べログをスクレイピングする方法を見ていきましょう。
https://www.octoparse.jp/template/tabelog-details-scraper
ステップ1. 食べログでデータ収集したいページURLを取得する
食べログのWebサイトにアクセスし、スクレイピングしたいレストラン情報のページを開きます。そのページのURLをコピーします。
ここでは、「銀座・新橋・有楽町」エリアを選択します。
ステップ2.Octoparseを起動し、食べログのテンプレートを選択する
Octoparseを立ち上げ、トップページの検索画面に「食べログ」と入力し、スタートを押します。すると、食べログのテンプレートが表示されます。
食べログのテンプレートは3つありますが(2024年4月時点)、ここでは「グルメ店リスト」のテンプレートを選択します。テンプレートの詳細画面に遷移するので、内容を確認し、「今すぐ試す」をクリックします。
ステップ3.スクレイピングタスクを開始する
先ほど、コピーした食べログのURLを貼り付けます。複数のURLを入力しても大丈夫です。入力が完了したら、「保存実行」ボタンを押します。
タスクの実行モードは、「ローカル抽出」または「クラウド抽出」から選べます。クラウド抽出はOctoparseの有料プランで提供されていますが、ローカル抽出に比べてスクレイピング速度が向上します。しかし、ローカル抽出でも充分にWebスクレイピングのスピードを体験できますので、ご安心ください。
タスクが開始されると、データの抽出が始まります。画面の数値が動いていれば、スクレイピングは順調に進行していることを示します。完了するまで少々お待ちください。
スクレイピングが完了すると「実行が完了しました!」のメッセージが表示されます。「データをエクスポート」をクリックすると、抽出したデータを保存することができます。エクスポート形式はExcel、CSV、HTML、JSONから選べます。
このように、わずか数分で100件以上の店舗リストを作成できました。
食べログのデータをスクレイピングしてできること
食べログをスクレイピングし、収集したデータはさまざまなシーンで役立ちます。ここでは、主な用途を3つ紹介します。
レストランのトレンド分析
食べログのデータをスクレイピングすることで、特定の地域やカテゴリーにおけるレストランのトレンドを分析することができます。例えば、オープンしたばかりのレストラン情報、評価が高いお店の傾向など、多岐にわたる分析が可能です。これにより、トレンドの変化を捉えることができます。
競合調査
スクレイピングにより、特定の地域における競合状況をリアルタイムに把握できます。例えば、特定のエリア・ジャンルの店舗をリスト化することで、店舗展開をする際の検討材料にすることが可能です。
また、評価が高い店舗をリストアップし、どういったメニューをどれくらいの価格帯で提供しているか調査することで、店舗の営業戦略を立案できます。このように、スクレイピングを通じて得られるデータを用いて、競合との比較分析や市場のポジショニングの確認が行えます。
マーケティングキャンペーンの最適化
食べログから得たデータは、マーケティング施策の効果を高めるためのインサイト(洞察)が得られます。顧客の好みやレビューの傾向を理解することで、ターゲットに対してより適切なキャンペーン戦略を練ることが可能です。
例えば、自店舗と同じエリアで評価が高いレストランをリストアップし、そのお店が実施しているキャンペーンを調査することで、より顧客ニーズにあったマーケティング施策を実施できます。
食べログを安全にスクレイピングする方法
食べログは、利用規約上ではスクレイピングを禁止していませんが、使い方によってはトラブルを引き起こす可能性があります。ここでは、食べログを安全にスクレイピングするための方法を3つ解説します。
過度に負担を掛けない
食べログのサーバーに過度な負担をかけることは、サービスの品質を低下させる原因となり、アクセス制限や法的措置を引き起こす可能性があります。安全にスクレイピングを行うためには、リクエストの頻度を制限し、人間が手動でデータを閲覧するかのような速度でアクセスすることが推奨されます。具体的には、数秒以上の間隔を空けてページリクエストを行うと良いでしょう。
食べログに未ログイン状態で行う
ログイン状態でスクレイピングを行うと、個人アカウントが特定されやすくなり、アカウントの停止や利用制限のリスクが高まります。未ログイン状態でスクレイピングを行うことで、リスクを避けることができます。
収集したデータは商用利用をしない
食べログのデータを収集する目的が、個人的な研究や情報収集に限られている場合、問題は少ないですが、収集したデータを商用目的で利用することは明確に禁止されています。食べログのデータを用いてビジネスを行う場合は、必ず食べログの運営会社との間で適切な許可を取得する必要があります。
まとめ
本記事では、食べログをスクレイピングする方法や、注意点まで詳しく解説しました。食べログには、数多くの飲食店情報やレビューが掲載されているため、データを活用することで、トレンド分析、競合調査、マーケティング戦略の最適化など、多くのインサイトが得られます。
一方、食べログのスクレイピングは利用規約上は禁止されてはいないものの、データの利用目的や方法には細心の注意が必要です。適切な方法でスクレイピングを行い、収集したデータを適切に扱うことが、法的リスクを避ける鍵となるでしょう。
法的リスクを避け、手軽にスクレイピングをしたい方は、Octoparseの活用がおすすめです。食べログテンプレートは無料で利用できますので、本記事で紹介した手順を参考に、ぜひ試してみてください。