インターネットの発展により、人々は世界中のあらゆる情報にかんたんにアクセスできるようになりました。デジタルトランスフォーメーション(DX)やデジタルマーケティングの推進において、効率的な情報収集とデータ活用は重要なテーマです。
グローバル市場調査を手掛けるグローバルインフォメーション社の調査によれば、ビッグデータの市場規模は、2026年までに2,734億ドル(日本円約34兆円)に達すると見込まれており、世界ではデータ活用に関心が集まっています。
しかし、「データ活用とは具体的にどういったことを指すの?」といった疑問を感じる方もいるでしょう。
その他にも、
- 使われるビジネスシーンは?
- 具体的なデータの収集方法、活用方法とは?
- 実施する時の注意点は?
といったことも気になるポイントです。
データ収集・活用の分野で、特に注目を集めているのが「Webスクレイピング」です。ウェブスクレイピングはWeb上のデータ収集に役立つ手法の一つです。
この記事では、ウェブスクレイピング技術とはなにか、Webスクレイピングに役立つツール、ウェブスクレイピングを行う際に役立つヒントまで解説します。
あなたのビジネスのデータ活用にお役に立てれば幸いです。
Webスクレイピングとは?特徴・使用例を解説
「Webスクレイピング」とは、インターネット上に存在する様々なWebサイトから情報を自動的に収集するプロセスのことです。Webスクレイピングでは「スクレーパー」と呼ばれるツールが、Webサイトやデータベースを探り、大量のデータの中から特定のデータのみを自動で抽出します。
Webスクレイピングは他にも、
- コンテンツスクレイピング(content scraping)
- データ抽出(data extraction)
- データスクレイピング(data scraping)
- ウェブクローリング(web crawling)
- データマイニング(data mining)
- コンテンツマイニング(content mining)
- データ収集(data collection)
- 情報収集(information collection)
と呼ばれることもありますが、どれも意味としては同じです。
Webスクレイピングの特徴とは?手動でデータ収集した場合の比較
Webスクレイピングを活用することで、手動でのデータ収集と比較して圧倒的に早く・確実にデータを集めることが可能です。
たとえば、自社の採用活動において、同業他社の給与や福利厚生といった市場調査を行いたい場合、手動の場合は求人サイトから一社一社コピペをしてExcelなどに貼り付けていきます。同じ作業を繰り返し、数時間かけてようやく市場調査データを完成させた経験がある方も多いのではないでしょうか。
同様のことを、ウェブスクレイピングを用いて、プログラムで処理した場合は1000件以上のデータをわずか1分程度で完成させることが可能です。時間が大幅に短縮されれば、詳細な分析や施策立案に時間を割くことができます。
Webスクレイピングが使われるビジネスシーン
データ産業におけるデータ活用は、市場の理解や、競合他社との差別化を図る上で欠かせないものとなっています。その元となるデータの収集においてウェブスクレイピングの活用は近年注目を集めています。
eコマース事業者、起業家、マーケティング担当者、コンサルタント、学術研究者にいたるまで、企業・個人問わずあらゆる分野で活用の幅を広げています。特にビジネスシーンではウェブスクレイピングを次のような目的で活用しています。
- 機械学習
- 価格情報
- ブランドモニタリング
- 市場調査
- リードジェネレーション
- センチメント分析
- トレンド分析
- コンテンツ&SEOリサーチ
- コンテンツアグリゲーション
- 製品データリサーチ
- アグリゲータサービス構築
- 自然言語処理
企業がどのようにウェブスクレイピングを利用しているか、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
【活用事例】Webスクレイピングでビジネスを成長させる方法30選
Webデータを収集する方法
手動でのデータ収集には手間と時間がかかり非効率です。単純なコピペ作業の繰り返しで一日の大切な時間を無駄にする代わりに、ウェブデータを効率的かつ大規模に取得する方法があります。ここではWebデータを効率的に収集・活用する5つの方法を紹介します。
Webスクレイピングツールを使う
スクレイピングツールはWeb上のデータ収集にとって最も手軽な方法です。ウェブスクレイピングの特徴は以下の4つが挙げられます。
- プログラミングなどの専門知識不要で設定が簡単
- 人件費よりもはるかに低コストでデータ収集が可能
- 目的・用途に合わせて柔軟にカスタマイズが可能
- クラウドを活用することで場所を問わず実行・保存が可能
エンジニアによるプログラミング
データ抽出要件があまりに複雑でスクレイピングツールで対応できない場合は、ITエンジニアによって、スクレイピングプログラムを構築する必要があります。
プログラミングを行うメリットは以下の2つが挙げられます。
- 自社の要件に合わせて複雑・高度なカスタマイズが可能
- 完全に制御可能で柔軟性がある
ただしエンジニアを自社で雇用する場合にしろ、外注する場合にしろ人件費などが高額になる可能性があるため注意が必要です。
Web APIによるデータ収集
API(Application Programming Interface)とは、サービスのデータを外部のアプリケーションやプログラムから扱うための機能を提供するインターフェースのことです。
かんたんに言うと、アプリケーション同士を連携させることで、機能を拡張し利便性の高い使い方を実現します。中でも、HTTP通信によってやりとりを行うAPIをWeb APIといいます。
オンラインサービスでは外部に向けてWeb APIを公開しており、その公開されているWeb APIを利用することによって、サービスから取得したデータの加工や、複数のAPIを組み合わせて、新しいサービス開発が可能になります。
データサービス
データ収集代行サービスは、依頼企業の要望に応じてWeb上のデータを収集したり、依頼期企業から預かった大切なデータ(名刺・紙書類・紙アンケートなど)を電子ファイルに入力したり、そして納品を行うサービスです。利便性が高いサービスです。ただし、情報漏えや不正利用には細心の注意を払う必要があります。費用もやや高いです。
モバイル用スクレイピングアプリを作成する
モバイルアプリケーションやデバイスでスクレイピングするには、
などのツールを使うことでスクレイピングを実行することも可能です。しかし、大規模のスクレイピングを自力でやろうとすれば、プログラミングの知識・経験は必須なので、初心者には少々難易度が高いでしょう。
外注する
クラウドソーシングやスキルシェアサービスを活用することで、フリーランスにデータ収集代行やウェブスクレイピングツールの制作を外注することもできます。
外注費用は掛かりますが、企業に外注するよりもリーズナブルな場合が多く、尚且つスキルとしても非常に優秀な方が多いのが特徴です。上手く相性が良いフリーランスを見つけることができれば、継続的に依頼もできるでしょう。
Webスクレイピングに役立つツールとは
近年プログラミングを使わずに、ノーコード(NoCode)でアプリケーションを構築できるサービスが注目を集めています。Webスクレイピングでも、誰でもかんたんに使える「Webスクレイピングツール」が次々と登場しています。
Webスクレイピングツールを活用することで、プログラミング知識がない方でもマウスのクリック操作だけで、データを抽出可能です。
代表的なのは:
- Octoparse
- Import.io
- Diffbot
- Mozenda
- Parsehub
- Scrapinghub
- UiPath
- WebHarvy
もっと多くのスクレイピングツールに興味のある場合は、下記の記事をぜひご覧ください。
【2023年最新】スクレイピングツール30選!|初心者でもWebデータを抽出できる
データ収集を行う際の注意点
Webスクレイピングの前提として、どのようなデータを収集したいのか?求めるデータの最適な収集方法は何か?スクレイピングの過程でどんなリスクが想定されるか?を事前に考えることが大切です。
その上で、スクレイピングを実行していく際には、いくつかの注意点があります。
1. 月額コストと得られる効果が見合うか検証する
Webスクレイピングツールには数多くのサービスがありますが、それぞれのサービスごとに費用も異なります。特にクラウドサービスの場合は、月額コストがリーズナブルに始められますが、プランによって機能が限定されている場合も少なくありません。
オプションなどを追加する内に、毎月のコストに対して得られる効果が少ない場合もあります。そのため、月額コストと得たい効果が見合っているか検証することが大切です。
ただしウェブスクレイピングツールに触れたことがない場合、そうしたシミュレーションも難しいと思いますので、まずは無料で使えるものから試すと良いでしょう。
2. ページの無限スクロールへ対応しているか確認する
Webページにはさまざまな形態があります。たとえば無限スクロールを採用しているWebサイトでは、新たな検索結果を追加する際にページをスクロールする必要があります。
このようなWebサイトでは、一部分のスクレイピングツールが自動的にこれを処理できます。もし、カスタマイズタスクの場合は、HTMLリクエストをリバースエンジニアリングする必要があります。
3. 動的なWebサイトへ対応しているか確認する
Webスクレイピングの大きな課題として「動的なWebサイト」への対応があります。多くのWebサイトでは、常に情報やWebページの構造を更新しています。
Webページの構造が更新された場合、その前に作成したスクレイパーはデータを抽出できなくなるケースがあります。その場合は相対Xpathは役立ちます。例えば、<p>要素にidがある場合、div/div[3]/p/text()と書かないようにします。むしろ //p[@id=”price”] と書くことをお勧めします。
Xpathについて詳しくはこちらをご覧ください。
4.CAPTCHA(キャプチャ)に対応しているか確認する
CAPTCHA(Completely Automated Public Turing test)とは、人間とロボットを見分けるための検証です。コンピューターでは見分けることのできない画像や、論理的な問題を表示することで、人間かコンピューターかを判断するために使用されます。
CAPTCHAは、データ抽出の過程で設定されたクローラーを簡単に破壊できるので、それを回避するのはWebスクレイピングにとって非常に重要です。CAPTCHA問題を解決するサービスとして、「CAPTCHAソルバー」があります。
CAPTCHAを克服する技術は、継続的なデータ取得に役立ちますが、それでもスクレイピングプロセスを遅らせる可能性があります。CAPTCHAの存在はWebスクレイピングにとっては厄介なものではありますが、どんなCAPTCHAであろうと、それに対応できるボットが開発され続けています。
CAPTCAについて詳しく知りたい方は以下の記事もご参考ください。
5. ハニーポットトラップに注意する
ハニーポットは、Webサイトの所有者がスクレーパーを捕まえるためにページに置くトラップです。通常の訪問者には見えないリンクですが、HTMLコード内にあり、Webスクレーパーによって見つけることができます。
スクレーパーがトラップに陥ると、Webサイト側は受信した情報(IPアドレスなど)を識別し、そのスクレーパーのアクセスをブロックします。
Octoparseでは、正確なキャプチャやクリック操作にXPathを使用し、ハニートラップに陥るリスクを大幅に避けることができます。
6.スクレイピング対策への対策をする
自社のWebサイトをスクレイピングされないようにするために、スクレイピング対策を実施する企業が増えています。スクレイピング対策とは、IP、クッキー、キャプチャ、ブラウザのユーザーエージェント、フィンガープリントなどの組み合わせを通じて、スクレイピングをブロックするものです。
しかし、Octoparseをはじめとしたスクレイピングツールには、スクレイピング対策に対応する機能が備わっています。たとえばクラウド抽出機能は多くのIPを持っているため、一部分のIPをブロックされても、他のIPに切り替えることで正常に作業できます。
7. 法的な問題への対策をする
抽出したデータを勝手に公開する著作権侵害や、Webサイトの利用規約にスクレイピング行為について言及されている場合は違法とみなされ、法的措置をとられる可能性もあります。
Webスクレイピングで、特に注意すべき点は以下の3つです。
- Webサイトの利用規約を確認する(利用規約で触れている場合は違反になる)
- サーバに過度の負荷をかけない(アクセス不能になり業務妨害にあたる)
- 著作権を侵害していない(抽出したデータを無断で公開・販売するなど)
さらに詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
スクレイピングは違法?Webスクレイピングに関する10のよくある誤解!
まとめ:
今回はウェブスクレイピング技術と導入時の注意点を解説しました。
データ活用の時代において、ウェブスクレイピングの技術はますます需要が高まります。今現在、自社がスクレイピングを活用するしないにかかわらず、前もって選択肢を知り、準備を進めることは間違いなく価値があることです。
Webスクレイピングをこれから始める方であれば、まずはOctoparseを試してみてください。Octoparseは無料から使えるため、これからWebスクレイピングを始めようと思っている人にとって最適なツールです。
Octoparseでは、わずか数クリックでデータ抽出を実行できるテンプレートも豊富に備わっています。まずはWebスクレイピングの世界をぜひ体感してみてください。